この本は楽しい。元気になる。
- 作者: 井上理
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2009/05/12
- メディア: 単行本
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この本の魅力は、任天堂がどうやってこれまでの成功の秘密を紐解いただけでなく、これからの時代を生きるヒントがたくさんつまっているところだろう。私は、この本を単なる「楽しい読み物」ととるか「何かに当てはめて考えるか」でこの本の重さが変わってくるとおもう。
任天堂がゲーム市場で目指す方向性は、メイドインジャパンの「ものづくり」にこだわり過ぎて世界標準と違った方向に進みすぎてしまった携帯電話や家電製品へのアンチテーゼのようにも思える。
技術競争に邁進するよりも、違うベクトルを模索して他社と違う価値を創出したその姿は、閉塞感に打ち悩む難局を打開するためのヒントを与えてくれる。ファミコン世代の私にとって、任天堂という会社がこれまで順風満帆ではなかったことがよくわかる。おそらく、予想だにできないような苦難を乗り越えてここまできたはずである。
生活に必要のない「娯楽品」を毎日使ってもらうために、かれらは常に考え続けているのだろう。それは、辛く苦しい作業に違いない。けれど、それを感じさせないところが彼らの強さだろう。
また、これまで、任天堂は数人のカリスマが率いて巨大資本と立ち向かい、苦難を乗り越えて成功するその姿はかつてのソニーやホンダを連想させ、(古い時代は知らないけど)なんだか懐かしい気分にさせてくれる。
見事にゲーム市場における破壊的イノベーションを実践した任天堂に拍手を贈ろう。そして、今後も私たちを驚かせてくれることを楽しみにしていようではないか。そう思わせる一冊である。