流されず逆らわず

コンピュータ関連のお仕事をしております。不惑を超えても惑い続ける男です。二児の父。

クラウドコンピューティングって何?(その5)


さて、では、クラウドコンピューティングに対し、今後日本のIT企業はどうしていくべきだろう。

今後、日本のIT企業が付け入る隙があるとすれば、企業向けのクラウドコンピューティングしかなく、Googleの力が及びにくい企業領域で陣地確保をすのが望ましいと思う。なぜなら、コンシューマ向けのサービスでは、SaaSGoogleで勝負が決してしまったからだ。
いまからAmazonGoogleと同じことをして、勝負に勝てるとは誰も思っていないだろう。だから、「ある程度の品質で、安い」という欧米のクラウドと同じ土俵で勝負しようとせず、日本独自のサービスを考えるべきだと思う。


では、今後、日本のIT企業はどのように対応していけばいいのか?


情報システムあるべき姿が、「水道のように、電気のように」が理想だとするならば、提供する情報システムの目標は、「使いたいときに使いたいだけ安価のコンピューティングリソースを提供する情報システム」を構築することというのはおそらく多くの人が認めることだろう。


それが実現されるために考えられることは、フェーズを分けて考える必要があると思う。コストメリットとスピードを活かした第一段階と、本格移行の第二段階になると予想される。


これまで述べてきたように、SaaS、PaaS、IaaSなどが提供されているが、「水道のように、電気のように」の究極の目標を実現するための第一段階に過ぎない。すでに移行が始まっている第一段階だが、今後も多くの企業に導入されていくことになるだろう。市場の大きさを考えるならば、まだまだ企業向けクラウドコンピューティングの提供はまだ始まったばかりと言える。


クラウドコンピューティングはその特徴を活かし、簡単で、安く、早いという特徴が生かせる企業システム領域に、
段階導入がすすんでいくのは間違いない。まずは、IaaSは企業の試験系/開発系、一時的に必要となるリソース(月末や年末などのバッチ処理系)、OA系(メール、ファイルサーバ等)など業務影響ができるだけ少ない領域、
あとは新規システムを導入する資金がない企業に対しての導入がメインとなるだろう。早期導入のスピードとコストメリットを活かして、特定の実績あるアプリケーションの導入が多くの会社で進んでいき、この勢いは今後数年間は持続するものと思われる。


では、その次の第二段階では何が起こるか。

第二段階では、単に簡単で、安く、早い、という特徴だけでなく、既存システムの本格的な代替手段としての導入が進んでくるものと予想される。また、昨今の不況も後押しし、コスト削減案の1つとして導入が加速することになるのだろう。


そして、日本の企業システム(特に大企業向け)で考えた場合、導入のための諸ポイント(リスク、使い勝手、機能、SLA、接続性)などを担保できるクラウドシステムが構築された時、日本での導入が加速するものと思われる。
そこで求められるものは、現在のクリティカルなシステムの諸条件を一定量で満たすことだ。
そこで求められる使い勝手、機能、SLA、接続性という条件を満たし、かつクラウドの特徴であるコストメリットや早期構築などのメリットが提供できるSaaSベンダーが日本で勢力を伸ばすだろう。


日本市場で一定領域を確保するのは容易ではないが、日本で求められる品質を提供するのであれば、日本国内で十分に利益を得られるクラウドを提供することは可能だと思う。なぜなら、諸外国が提供するSaaSは、ある程度のクリティカルなシステム領域で求められる日本の品質レベルを満たすことは難しいと考えるからだ。


そして、私が思うに、日本で普及の鍵を握るのは間違いなくSIerなのだと思う。なぜなら、多くの大企業で既存システムがある場合、システム移行を安全に行うスキルを持っているのは、間違いなくSIerしかいないからだ。アプローチは間違いなくコスト削減案で、SIerが様々なアプリケーションで提案していくものと予想される。


では、ベンダーやSIerが今なすべきことは何なのか?それは、単純にいうと「早いもの勝ち」で、早く実績をつくり、自分の陣地を守りつつ既存のリプレース案件や新規構築でスケールメリットを活かし、他社のSI領域に攻め込むことを考えるなのではないかと思っている。