流されず逆らわず

コンピュータ関連のお仕事をしております。不惑を超えても惑い続ける男です。二児の父。

革命から近いようで実は遠い遠い人たち


IT業界に身をおくものとして、考えてしまう問題がある。
それは、自分がこの世界における「情報技術が世界を変える時代」(by梅田望夫さん)から一番遠いところにいる人間なのではないだろうかということである。時として、自分が身を置くIT業界は、革命から取り残されていくのではないかという奇妙な感覚に襲われることがあるのだ。


これまで、IT業界はさまざまな業態に対し、ITおよび情報技術の普及を通して変革を迫り、利益を享受してきた。いろんな業種にITを積極的に導入することにより、業務の効率化を実現してコストダウンを図り、情報を共有化し経営を迅速化し、今まで提供していなかったような新しいサービスを実現してきたのである。


そんな中、多くの企業がITの導入に「受託開発」形式でSIerに発注を行ってきた。受託開発とは、顧客ニーズを満たすために特注開発するシステムのことです。それは顧客の担当部門が、本来はサービスとして提供する開発の全て(もしくは一部)をSIerに発注し、SIerのエンジニアが開発を行う。
現行の業務をシステムに落とし込むためには特別なスキルが必要だったため、発注企業側の情報システム部門の担当者とSIerの担当エンジニアが要件を定義し、その要件にしたがってSIerが開発するという仕組みだったのだ。


ところが、昨今この形式に変化が訪れようとしている。受託開発にこだわらない、いろんな選択肢がでてきたのだ。

自社開発(内製化)やSaaSという選択肢がでてきたのである。ツールはどんどん安く簡単になり開発しやすくなってくるし、SalesForceをはじめとするSaaSが台頭してきた。

これまでの受託開発にはいくつかの問題があった。ユーザ企業がSIerに発注してシステムを作ってもらうことは、自社開発をすることに比べてラクなんだけど、ノウハウが自社に残らない。だからシステムが完成した後も規模の大小を問わず仕様変更をSIerに発注しなきゃならない。細かな作業でもすげー金がかかるし、ベンダーに発注するまでのタイムラグがある。SIerは品質を担保しなきゃいけないし、瑕疵の問題もあるので試験をバッチリしないといけない。それゆえに開発期間時間がかかり、出来上がったときには時代遅れになっていることがほとんどだ。そんなわけで、受託開発でシステムが完成した後はSIerによる仕様変更という名の搾取が始まる。


この流れ、何よりもSIerに「受託開発」で仕事頼むと、金と時間がかかるわりには求めるものが出来上がらないということを顧客部門が身をもって知ってしまったのが原因ではないだろうか。そもそもSIerだってゼネコンと一緒で、品質管理とプロジェクト管理してるだけじゃんって気がついちゃってるし。

・・・という流れができつつある。今の潮流の中で、今後一番の被害を被るのは他ならぬSIerなのだ。


そんな理由で、昨今ユーザ企業側はSIerの開発に全てを委ねる必要がなくなってきたのだ。
もちろん、ビジネススピードがどんどん速くなっている昨今だが、これまでどおりの受託開発は無くならない。これからも1年超のプロジェクトはまだまだ多く存在し、これまでの受託開発はすぐに消滅することはないだろう。

その流れに対し、SIerはどうするか。

 ・あくまでも請負式の開発にこだわりつづける
 ・アウトソーシングなどの別のビジネスモデルを模索する
 ・インフラ周り、アーキテクトなど一部に特化したビジネス領域を提供する
 ・人だしビジネスでユーザ企業側の内製化を促進させる
 ・・・etc


一番安易な方法として安易に選択するのは、あくまでも請負ビジネスにこだわり、これまでの利益率を確保しようとするという選択肢ではないか。実際、確かに売り上げは落ち込んでいるけど、受託開発はまだまだ儲かる。だから、このままであろうと必死になる。SIerにいるほとんどの人たちが、「今のビジネスのままでいーじゃん」って思ってるはずなんですよ。このままでいるほうがオトクなんです。

けれどもそうもいかない。このままだとジリ貧なんですわ。どんどん売り上げが落ちていくし利益率も下がっていくしユーザも離れていく。でも、気がついたときには受託開発のビジネスモデルにしがみつくしか選択肢はないってな状況に陥ってるんですわ。


というわけで、他の業態がどんどん変革を余儀なくされていくなか、革命から近いようで実は遠いのは、ほかならぬSIerなのかもしれないね、と思ってしまい書いてみました。
繰り返しになりますが、私はこの業界に身をおくものとして、常に向き合っていくべきだと思っています。