流されず逆らわず

コンピュータ関連のお仕事をしております。不惑を超えても惑い続ける男です。二児の父。

毛髪にかける切実な想い

今朝、早起きしてしまったので、仕事を片付けながら
過去のメールを整理していたら、こんなメールが出てきました。

そのメールは、自分の毛髪に対する切実な想いを、
わずかな希望に託す様子を物語風にアレンジした文章である。


オチはないです。あらかじめ。

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「昔,ここは緑の星と言われていたのじゃ」
年老いた科学者がおもむろに口を開いた。若い科学者は
信じられないというまなざしで年老いた科学者を見た。


だが,20年以上も昔,確かにこの星の表面はたくさんの木々に
覆われ,黒々いや青々としていたのだ。


木々の太さ,硬さにおいてはむしろ他の星々を凌いでさえいた。
しかし,近年自然は確実に以前の力強さを失っていた。
そして,今年7月,A博士によってついに北極圏に
巨大な不毛地帯が発見されたのだ。科学者たちは慌てた。


なぜなら,このまま不毛地帯が広範囲に広がった場合,
残った木々をも自ら刈り取り,あたかもこの星に緑は
必要ないのだという姿勢を装うか,模造の緑で不毛地帯
覆って取り繕うしかないのである。後者の選択をした場合,
例えそのことが公然の秘密となったとしても,最後の最後まで
白を切り通さなければならない。
もはや一刻の猶予も許されなかった。


科学者たちは,新開発の物質Vにすべてをかけることにした。
この物質は,土壌を清潔に保つと同時に養分を供給することで
木々の発育を促す。成功する保証はないが,他に方法はない。


プロジェクト開始から1ヶ月が経った。不毛地帯は縮小する
どころか,むしろ広がる速さが加速していた。やはりだめか,
希望がため息に変わったとき,奇妙な現象が確認された。
この1ヶ月間に新たに生えた木々が,明らかに太いのである。


調査の結果,この現象は地上の広範囲において発生している
ことが分かった。さらに,緑の再生に成功した他の星でも
その過程において一時的に不毛地帯が広がることがあることが
分かったのである。「再生が始まっているのかもしれませんね」


若い科学者が言った。年老いた科学者はだまって遠くを見ていた。
果たして,豊かな緑を取り戻すことはできるのか。


注目の次号を待て。